こんにちは、今日は山口市仁保にあります「ときつ養蜂園」さんにお邪魔しております。
養蜂というのは蜜蜂を飼育することで、ときつ養蜂園では製法から使用する巣箱まで何から何までこだわったオーガニックの高級ハチミツを作っています。
私は今までスーパーで並んでいる一般的なハチミツの味しか知らないので、何がどう違うのか、そのあたりも聞いてみたいと思います。
目次
ときつ養蜂園の外観と店内。
こちらがときつ養蜂園の販売所。古民家を改装したような木製のおしゃれな入口。駐車場は2〜3台ほどありました。
この田舎にポツンとある感じ、田舎暮らしの私が言うのもなんですけど田舎に帰ってきた気分になります。
店内はハチミツだけでなく、ハチミツを使用した焼き菓子が並んでいます。外観と内観は同じ職人さんが作っているのか統一感があり、木の温かみが感じられる店内となっています。
時津さん今日は宜しくお願い致します。
宜しくお願い致します。
養蜂園を始めたのはいつからですか?
だいたい6年ほど前になります。それまでは警察官でしたけど、昔に養蜂園を営んでいた祖父の勧めもあり、退職して開園することになりました。
警官から養蜂家へ転身はなかなか稀なケースですね。養蜂家の祖父ということは後を継いだという形ですか?
いやまったく(笑)祖父の知り合いや養蜂組合の先輩などからノウハウを学び、後は全て独学によるものですね。
なるほど。養蜂家は50代で若手って言われている世界ですけど、時津さんまだ40代なので超若手ですよね。
私が山口の養蜂組合でも最年少だったんだけど、最近30代の若い方が入りました。ただ妻も組合員になったので、一応妻が20代で最年少ということになります。
奥さんめっちゃ若いですね。あ、あと実際に蜜が入ってる巣箱など見てみたいんですけど、現場で見学することは可能ですか?
いいですよ、近場ですしこれから作業があるので移動しましょう。
巣箱の設置場所(養蜂場)へ
巣箱を設置している場所は秘密になりますが、現在は県内に6カ所ほど採密場があるそうです。ミツバチは半径2〜3km圏内で活動するので、1ヶ所にミツバチを集中させてしまうとすぐに周辺の蜜源が枯渇してしまいます。そのため巣箱の数を分散させたり移動させたり、バランスを見ながら調整しているとのこと。
巣箱の中に巣礎(すそ)と呼ばれる薄い板を入れます。巣礎は六角形の刻印が連続で並んでおり、規則正しく巣穴を作らせるため、ミツロウを用いて人工的に形にしたものです。多くの養蜂家が使用する一般的な方法です。
ミツバチはお腹のあたりの蝋腺(ろうせん)が発達してて、そこから蝋を分泌して巣礎へ左官のようにペタペタと塗って巣を作っています。
この巣礎は基本的に長く使用できるものですが、自然界には農薬が多く存在します。ミツバチがわずかに持ち帰ったり、徐々に巣礎自体に残留する恐れがあるため、時津さんは定期的に新しいものと取り替えているそうです。同じ巣礎を1年以上使うことはないとか。
巣礎も綺麗なものに取り替えて、巣箱も特注なんですよね?意外とミツバチ達も良い暮らししてるような気がします。
ええ、人間より良い家に住んでます(笑)
ミツバチの状態や密の入り具合をチェックするべく、採密をしない日でもこうして足を運んでいます。ハチミツがたくさん採れるのは4・5・6月だけなので、取材日はなかなか豊作だったようです。
なるほど。はちみつは数ヶ月しか多く採れないのですね。ミツバチは冬の間どうしているのですか?冬眠などはしないですよね?
冬の間はミツバチ同士で固まって温度を上げながら春になるのを待っています。その頃は自然界に食べるものが何もないですから、我々が餌を与えてあげないといけません。7月あたりから蜜が減るので、オーガニックの砂糖水を与えたりしています。
年中ずっと人の手が必要なら大変な仕事ですね。はちみつの味は季節や花によって変わりますよね?具体的にはどう変わりますか?例えば味が薄くなるとか濃くなるとか、香りが強くなるとか、糖度が変わるとかそんな変化ですか?
花によって甘さの質と香りは変わりますね。例えばミカンの花のはちみつであれば、ミカンの花の花粉の香りがします。糖度に関しては、はちみつの基準は78度以上の糖度が必要になりますけど、ウチはどれも80度以上あります。ですので糖度に関しては大きな差はありませんが、花の香りによって甘さの感じ方は変わると思います。
作業風景(蜂の大群閲覧注意)
奥さんへもお話しさせていただきましたのでバトンタッチ。ここからミツバチのアップ画像や密集している写真が続きますので、苦手な方は注意してください。
奥さん宜しくお願い致します。
宜しくお願いします!
ミツバチも種類があると思うのですが、ときつ養蜂園ではどんな種類の蜂がいますか?
ウチはセイヨウミツバチになります。趣味で飼っている方はニホンミツバチが多いと思います。ニホンミツバチは採れる蜜が少ないので商業には向いてないんですよね。採算が合わないと言うか。
蜂もコミュニケーション取るって聞いたことがあるのですが本当ですか?
そうですそうです、2km離れている蜜源を仲間に知らせる時などは八の字ダンスと呼ばれる動きで知らせたり、近場であれば往復する動きで知らせたり、これはセイヨウミツバチならではのコミュニケーションです。
ニホンミツバチは自分の巣から近い蜜を取ってくるんですけど、セイヨウミツバチはその時期のその時間帯の一番蜜が増えている植物にのみ行くんですよ。そしてその場所を仲間に教えるという効率的ですごい賢いんです。
小さいのにめっちゃ賢いですね。ときつ養蜂園で採れるのは本物のはちみつですが、本物であるがゆえの心配事。例えばわずかに混入した花粉でアレルギーが出るとか、そういった心配はありませんか?
めったに花粉アレルギーが出るなどは聞かないですけど、1歳未満のお子様はボツリヌス菌の耐性が付いてないので食べないように注意することですね。大人になってから気をつけることはほぼないと思います。
ありがとうございます。では時津さんの作られたはちみつと、スーパーなどで安価で買えるはちみつと、どのような違いがありますか?
やはり花の香りがちゃんとあるということと、エグ味が圧倒的に少ないところが違いかなと思います。
実は国産のはちみつでもミツバチ自体に農薬を使うことがあります。ミツバチの体にはミツバチヘギイタダニというダニが付くことがあり、これが付くとミツバチの生存機能が低下し働かなくなってしまいます。このダニを駆除するための薬剤があって、これをだいたいの養蜂家さんは使ってます。それを使うとはちみつの中に発がん性の農薬が残留してしまうので、それがエグ味の元になったりします。
ただ主人が以前に癌になったこともあったので、そういった薬剤は使わないようにしようと。なのでお客さんにも普通のはちみつと違ってエグ味がないねと言われることは多いです。
すごく徹底していますね。ではときつ養蜂園のはちみつは無農薬で作られたオーガニックはちみつになりますね。
そうですね、一応オーガニック的な養蜂でやってはいます。本当はJASマークとか取りたいんですけど、JASマークの品目の中にはちみつが含まれてないんですよね。蜂って飛ぶからどこに行くか分からないじゃないですか、農薬がかかる地帯に行くこともあるし、その花から蜜を取ってくることもありえるからですね、そんな理由でJAS認証は取れないんです。でもウチは農薬を使ってないので、オーガニック的な養蜂はやっているという感じですかね。
残留農薬の検査も出して、残留農薬なしという結果をもらっているので、一応証明もされています。
これは燻煙器と呼ばれる物。中で木のチップや麻の布などを燃やして煙を出す機材で、煙を吹きかけると蜂が一時的に大人しくなります。巣箱を開けたり閉めたり、作業する時に使用することがあるそうです。
ただ燃やすのは自然由来のものだけで、化学繊維は燃やしてはいけません。ときつ養蜂園では自然由来の麻を燃やしているとのこと。
この中で女王蜂がいるんですけど分かりますか?
え、、、全然分からないです。
ちょっと大きさとか色が違うんですけど。
わかりました!真ん中にいる色が違う蜂ですね!
そうです!実は女王蜂も元々は他の蜂達と同じ有精卵なんですよ。でも孵化して王台と呼ばれる部屋で生まれた幼虫だけが働き蜂からローヤルゼリーを多く与えられて女王蜂になるんです。ローヤルゼリーを食べる量が少ないと働き蜂になります。元は全部一緒の蜂なんですよ。
生まれたときから女王なんですね。やっぱり良い物を食べてる分、長生きですか?
そうですね、働き蜂はだいたい1〜2ヶ月の命ですけど、女王蜂になると寿命が3年ほどになります。
そんなお話を聞きながらも奥さんは巣箱を1つずつ確認してました。私が前日から用意していた質問も全て答えていただいたので、かなり普段から研究されてるんだろうと思います。
大変だったエピソード(失敗談)。
養蜂は畜産業の中でも難しいとされてますけど、今まで大変だったエピソードとか、トラブルなどあればお聞かせできますか?
やはり周辺の農家さんが畑に散布する農薬は天敵となりますね。無人ヘリコプターで散布してるんですけど、農薬を撒く日は巣箱に蓋をして飛ばないようにしてます。以前に一度農薬を持ち帰り蜂が半分くらい死んでしまったこともありました。
被害額もやばそうですね。なんとなく私の記憶ではスズメバチの襲撃が多いトラブルだと思ってたのですが、そのあたりはいかがですか?
このあたりでは少ないですね。ただ違う場所ですけど熊に襲われたことはあります。巣箱が全てひっくり返されて中のはちみつを食べられてましたね。あれもけっこうな被害になりました。
熊ですか(笑)電線でも張ってないと無理そうですね。では何か仕事をした上での失敗談なども教えてください。
そうですね、はちみつを遠心分離機にかけて缶に移す作業があるんですけど、その移す途中に地面にぶち撒けたりですかね(笑)他のスタッフもやらかしたことあります。
なんかイメージが湧かないんですけど、それも被害額が数十万はありそうですね。
私の場合は失敗を失敗と思ってないですからね(笑)こうやると上手くいかないことが分かったという感じで。
実際のはちみつはこちら。
こちらが採密したはちみつを瓶詰めした商品です(遠心分離機を使ってはちみつを採るシーンは今日は撮れませんでした。)はちみつも採って終わりではないと思いますので、例えばどんな加工をしているのか製造についても詳しく聞いてみたいと思います。
花によってはちみつの香りや色が変わるとおっしゃってましたが、現在は何種類ほどのはちみつを販売されてるのですか?
全て合わせると13種類ほどあります。今だとテイカカズラのはちみつを推しています。
ときつ養蜂園のはちみつは加熱と非加熱どちらですか?
よく「生はちみつ」を謳っているところもあるじゃないですか。実は生はちみつは日本養蜂協会でもどのように定義するのかまだ決まってないんですよね。ただ国産のはちみつはほぼ全て生はちみつであるという前提があります。
ウチでも採れたてのはちみつは濾過してそのまま瓶詰めして出荷してるんですけど、採って保管しておくと結晶化して固まるので、それを40度〜45度の間で数日かけてゆっくり溶解させてます。なので加熱というよりは加温と言った表現を使うことがあります。
なるほど、たしかに瓶詰めのはちみつが白く結晶化しているのは見たことあります。加熱して味を濃縮させたり殺菌するのではなく、ただ固まったはちみつを低温で温めて溶かすということなんですね。
100度の加熱だとはちみつに含まれる酵素などはなくなってしまいますが、実は60度までの加熱であれば減る酵素もあれば増える酵素もあるんですよ。そのへんを広島大学の教授と研究してて、何千何万という種類の酵素があるから、熱を加えることではちみつが著しく劣化して、生はちみつじゃなくなるわけではないというのが今の考えですかね。
今はこちらの商品はどこで販売されてますか?
今は店舗での直売と、仁保の道の駅、スーパーの新鮮市場で購入できます。あとはネットショップですね。月一くらいでYCAMのマルシェで出店したり、イベントにはわりと出店するようにしてます。
ときつ養蜂園のはちみつを1番美味しく食べる方法はなんですか?
そのまま何も付けずにパクッと食べるのが1番美味しいと思います。もちろんトーストにも合いますけど、肉料理などにもちょっと入れるだけでビックリするくらい美味しくなります。
お客様の評判はどうですか?
今のところ過去最高と言っていただくことは多いです。今まで食べたことないと。東京で出店したときも同じような評価をいただきました。
さすが時津さん。1番こだわっているポイントはどこですか?
水には極端にこだわってます。
水?どこかの湧水を使っているとか?
FFCウォーターと言う高波動の水を使ってます。
波動?すみません少し詳しく聞かせてください。
水にはそれぞれの周波数があるんです。ちゃんとエビデンスが取れているんですが、例えば周波数が低い人って言うのは体調が悪い。ところが高い人っているのは免疫力が高い。ウチで使用している資材は全てFFC高波動処理をしているので、巣箱も病気がわきにくくアレルギーも抑える。そのため無農薬養蜂ができています。ただすっごくお金がかかりますから、こんなアホなことやっとる養蜂は日本にいないかも知れません(笑)
なるほど、人間より良い家に住んでいるとおっしゃってた意味が分かりました(笑)
今後の展開や目標を聞いてみた。
そんな無農薬養蜂にこだわる時津さんに今後に予定している展開や新商品、また最終的なゴールというか目標などあればと質問してみました。
はちみつって色んな展開ができそうですけど、はちみつの販売意外に今後何か考えていることはありますか?
直近で言うとキッチンカーを導入する予定なので、そこではちみつジェラートとか、デザートに限らず飲食をちょっと発展させたいなと。
めっちゃいいじゃないですか、これから暑くなってくるんで冷たいアイス系は売れると思います。
あと長期的な目標としては仁保を有機エリアにして、それが県内から国内に広まってくれればなと。国内で最も養蜂が盛んな県は長野県なのですが、その理由として有機農業大国なんですよね。農薬を使わない野菜や米を作る考えが浸透してて、蜂が死なない環境の結果盛んになるという。山口県は健康に関する関心というのは国内でワーストに入りますので、そのあたりも考えてます。
ただ最終的なゴールはまだ先ですよ。
ゴールはどこですか?
世界を救うことですよ(笑)
それは絶対に書いておきます(笑)
ときつ養蜂園まとめ。
お昼から店舗へお伺いして帰る頃には17時を過ぎているという、ありえない長時間の取材になってしまいましたが、快く応じていただいた時津さんありがとうございました。おかげで養蜂を始めれるんじゃないかというレベルの知識が付いた気がします。ここには書けない裏話も聞けて色々と勉強になりました。
とにかくこだわりにこだわったはちみつ作りをしていることは分かっていただけたかと思います。
あとはちみつの味なんですけど、そこだけはご自身で試して欲しいと思います。私は3種類ほど食べましたが、あえて感想はここで書かないようにします。
時津さん今日はありがとうございました。あとはちみつを使った焼き菓子も置いているそうなので、いくつか写真撮らせてください。
いいですよ、厨房があるのでどうぞ入ってください。
めちゃめちゃ可愛いじゃないですか。これも店舗で買えるんですよね?
全てではありませんがご予約のみの受注販売です。カヌレははちみつや有機豆乳を使用しており、他のお菓子も砂糖や小麦は使用しておりません。かなりこだわってます。
店内にテーブルが置いてましたけど、イートインは可能ですか?
現在はイートインはできないんですけど、近い将来にそうする予定です。
それは楽しみです!最後になるんですけど、養蜂の楽しさや面白さを教えてください。
やっぱり命を預かるとみんな家族みたいなもので、蜂と共に生きるというか。死んだ時は本当にめっちゃ悲しい。でもこうしてはちみつが採れて、お客さんが喜んでくれるところまで全て自分でやれるところ。本当に楽しいですね。
小さな命を扱うのは養蜂家ならではですね。すみません今日は長々とお話しして、次はお店のイートインでお邪魔するかも知れません。ありがとうございました!
ありがとうございました!
ありがとうございました!
店名 | ときつ養蜂園 Bee’s life |
住所 | 〒753-0303 山口県山口市仁保下郷561-1 |
営業時間 | 10:00〜18:00 |
定休日 | 不定休 |
駐車場 | 2〜3台 |
電話 | 083-929-1688 |
ホームページ | https://bees-life.net/ |
最後にときつ養蜂園さんをまとめると
・超が付くほどの高級ハチミツ
・オーガニックにこだわっている
・山口市仁保の自然の中にある
・全ての資材にこだわっている
・めっちゃいい人
ということで、ときつ養蜂園の本物のはちみつに興味がある方はぜひ一度試してみて欲しいと思います。