萩市が管理する田中義一別邸。


第26代内閣総理大臣となった田中義一の別邸。かんきつ公園内、橋本川の前にあります。この別邸の主要建物の骨格は、萩に夏みかん栽培を広めた小幡高政が完成させ、大正後半から田中義一が所有することになり、主屋の増改築が行われました。遺族より平成10年から萩市が土地・建物の寄贈を受けています。主屋は江戸時代末期に、土蔵・表門は明治初期~前期に建てられたと考えられており、平成11年4月に重要伝統的建造物群保存地区において伝統的建造物として認定。見た目は普通の家屋ですが、内部は当時のものを再現しているものも。

主屋は南側より平屋部、茶室部、五松閣があり、平屋部=桁行14.9m 梁間4.9m 入母屋造り。茶室部=桁行8.0m 梁間4.9m 切妻造りの銭瓦葺。五松閣=桁行13.1m 梁間4.9m 入母屋造の銭瓦葺。土蔵は桁行5.8m 梁間3.9m 切妻造。表門は切妻造の銭瓦葺。小さい部屋が多いですが、部屋数は22部屋、畳の数で105枚あります。

田中義一は元治元年(1864年)に萩呉服町で萩藩史である田中信裕の三男として生まれました。明治16年には陸軍教導団から士官学校へ入り、明治22年に陸軍大学校へ進む。明治27年の日清戦争では第一師団副官、その後は大尉に昇進します。ロシアに留学し軍事・政情を調査し、日露戦争では軍部の改造に参画、中枢部を歴任したようです。大正7年には原敬内閣の陸軍大臣となり、大正10年には大将に昇進。このように陸士・陸大を経て日清・日露戦争に従軍したところをみて、またいずれは元帥と噂されるほど、軍人としては有能だったことが分かります。

しかしその後は政界入りを果たしましたが、政治家としては賛否両論があるもよう。金融恐慌では政界を退いていた高橋是清を蔵相に招き危機を乗り越える・・・ここは良かったのですが、武力を背景中国へ強圧的な外交政策を進めたり、内政においては左翼陣営への弾圧や権力テロがはじまったり。田中内閣の実績といえばパリ不戦条約への調印などがありますが、歴史的な評価は高くないようですね。

田中義一の長男である龍夫の像。


本来の玄関を入ってすぐに置いてある田中龍夫の像。歴代2位の若さで山口県知事に当選(36歳)。田中義一の長男である。通商産業大臣、文部大臣を歴任。

大将服から身長180cmと推測。


座敷には大将10年(1921年)陸軍大将に昇進し、そのときに身に着けた正装が展示されてます。胸には日本の勲章と、中国・フランス・スペイン・ロシアなど諸外国から授与された勲章が。右には秋田県で生まれた日本画家である平福百穂(ひらふくひゃくすい)が描いた田中義一の肖像。

建物の工夫や面白さも随所に見られます。


これは日本建築にある部材で、柱を水平方向へつなぐ長押と言います。鴨居の上から被せたり、柱間を見渡せるよう壁に沿って取り付けられます。一般的な住宅との違いは面取りしてないことですかね。

そして長押が交差する部分に打った大きな釘の頭を隠すために使用する釘隠し。この別邸では松ぼっくりが釘隠しになってます。

波打つように歪んだ大正ガラス。


写真では分かりませんが、これは大正ガラスと呼ばれるもの。横から見ると波打っているというか、歪んでいるのが分かります。明治後期から大正にかけては「手吹円筒法」が主流であり、今のガラスのように均一な厚みを保てませんでした。つまりわざと歪ませているのではなく、技術的な問題でこのようなガラスになってるようです。この別邸では全てのガラスには使用されてませんが、一部で見ることができます。このレトロな感じが好きという方もいらっしゃるようです。

オシャレから取ったしゃれぼく。


昭和の建物は床柱に特徴があり、写真は「しゃれぼく」「しゃれき」と呼ばれるもの。オシャレのシャレです。そして床の間などの上方小壁にある横木を落とし掛けと言いますが、この落とし掛けも二重になってます。全体を見渡してここは別邸の中でもちょっと遊び心のある部屋でした。

かんきつ公園にて夏みかんを栽培。


ここから東屋(庭園などで休憩などの目的で作られた簡易な建屋)が見え、その周りにみかん木が400本近く生えてます。350~360年の松も見どころ。

ビューポイントは2階からの眺め。


田中義一別邸においては、ここが1番の絶景だと思います。2階のふすまから見える橋本川。天候によって左右されますが、ここはぜひ見ていただきたい場所です。

基本情報

場所〒758-0074
山口県萩市平安古164
かんきつ公園内にありますので、ナビの方はそちらをセットしてもいいでしょう。ただし田中義一別邸は住宅地の奥にありま。看板は出ておりますが道が狭いので車の飛び出しなどに注意してください。
交通アクセス①「平安古南団地前」バス停から徒歩7分
バリアフリー建物内は段差がありますので対応していないと思われます。
観光客の多さ人が多いのは連休くらい。ややアクセスが不便なので萩市の観光地の中では少ないかなと。
観光の所要時間10~15分
料金100円
※小学生未満は無料
営業時間9:00~17:00
休館日12/30~1/3
駐車場有り(無料)
多数あるが大型車は駐車不可
周辺施設なし
周辺の観光地平安古 鍵曲(徒歩約1分)
坪井九右衛門旧宅(徒歩約1分)
久坂玄瑞誕生地(徒歩約7分)
萩 明倫学舎(車で約5分)
口羽家住宅(車で約6分)
周辺のスポットかんきつ公園(夏みかん/5月)
管理人から一見、普通の民家に思えますけど「大正ガラス」など昔ながらの製法を見ることができます。ここへ辿り着くまでの道が分かりやすければもっとオススメしたい観光地だが、やや分かりにくいのが難点。5月にはかんきつ公園内で「夏みかん祭り」が開催されるので、その時期に来るのがちょうどいいかも。

地図